不法行為の損害賠償請求権の時効について
損害賠償請求権と時効
大学生のXさんは、大学で講義を受けた後、帰宅しようと駅まで歩いている際にYさんの運転する車に轢かれてしまいました。Xさんは、Yさんに対して不法行為による損害賠償請求をしようと考えています。このような場合に、損害賠償請求権が発生するとして、その損害賠償請求権が時効によって消滅することはありえるのでしょうか。
不法行為による損害賠償請求権の期間の制限(時効)
民法724条に、不法行為による損害賠償請求権の期間の制限(時効)のの規定があります。「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」というのがその規定です。上記の例のような交通事故では、ひき逃げや、加害者の住所を詳しく聞いていなかったなども少なくないケースといえますので、「加害者を知った時」という文言が気になるところです。そのような場合は、「被害者が不法行為の当時加害者の住所・氏名を的確に知らず、しかもこれに対する損害賠償請求権を行使することが事実上不可能な場合には、その状況がやみ、被害者が加害者の住所・氏名を確認した時」と解釈するという最高裁判所の裁判例があります。
実際に時効が問題になるような場面で損害賠償請求権を行使する場合には、他にも必要な専門知識がございますので、専門家である弁護士に相談することが賢明です。