不法行為と素因
被害者の素因とは?
交通事故などの場合は、加害者の行為が不法行為と評価されることがあります。このような場合は、被害者からすれば加害者の損害賠償責任が認められるかが気になることでしょう。このような場合に、被害者の有していた素質、すなわち、精神的・身体的性質や病的疾患が、損害の発生あるいは拡大の一因となっていることがあります。たとえば、被害者が事故の後に精神的な病気にかかってしまい、結果として治療費が増大していたというような場合がこれにあたります。このように、損害の発生・拡大の原因となった被害者の素質のことを、素因といいます。では、裁判所は、このような被害者の素因を考慮してくれるのでしょうか。
裁判所の素因についての判断
裁判所は、心理的素因が損害の拡大に寄与している事件(50日の加療を要するとされたむちうち症の治療が10年間にわたった事件です)で、このような場合にまで損害の全部を加害者に賠償させるのは損害の公平な分担を目的とする損害賠償法の理念に反するとして、賠償額の減額を認めました。しかし、まだまだ統一的な見解が出たわけではないと考えている学者や弁護士が多いというのが現状です。事件によっても事情は異なりますので、素因が問題になりそうな場合は弁護士に相談してみましょう。